ABOUT

野口マサジ
野口マサジ Masaji Noguchi

1970年埼玉県に生まれる。
大学卒業後公務員になるが、自分一人で全てを作り上げる靴職人に魅せられて退職。
’98年、原宿にある「モゲ・ワークショップ」の門を叩く。手づくり靴を一から学ぶ。
’99年、学校の貸工房制度を利用して注文靴製作を開始。
2001年、神奈川県茅ヶ崎市に工房を構え、本格的に注文靴と手づくり靴の教室を始動。
2006年、手づくり靴を仕事にする専門コース「WORKS」を開校。
2011年、心機一転、「靴の自作工房ヒロ」にて木型を学ぶ。
2015年、14年間活動した茅ケ崎を離れ、さいたま市・浦和へ工房を移転。
茅ケ崎工房は、Works卒業生らが自主運営するスタジオ「Village」として新たにスタートする。

靴の棚
靴へのおもい

人とモノとの関係を考えるとき、モノはその持ち主の「ひととなり」を映し出す鏡と言えるのではないでしょうか。 そしてそれが最も顕著に現れるモノの一つが「靴」だと考えます。 ▼本来靴というものは人が「歩く」という行為を補助するもの。決して歩くことを妨げてはならないと思います。 この点から考えると、体裁ばかり良くても履いていて足が痛くなったり、後に障害をもたらしてしまうようなものは良い靴とは言えないでしょう。 ▼ですからノグチ靴工房の靴は機能本位です。ヒールの高いもの、つま先の尖ったものは作りません。クラスコンシャスな注文靴もお断りしています。 ▼この工房で生み出される靴は、履き手の生活の中で「暮らし」を共にする存在であって欲しいと思っています。 毎日履くものだから身体や環境にやさしく、何十年も一緒に歩けるような丈夫な靴を提供したい。また、そういう靴が好きな人たちと関わり合っていきたい。 ▼手を尽くして作った靴には作り手の気持ちが宿ります。そして、手渡したいのは靴というよりもその「こころ」です。 ▼「人と人とをつなぐ靴」ノグチ靴工房が作りたいのはそんな靴なのです。

バケッタレザーMade in Itary
素材へのおもい

ノグチ靴工房では、履き手の身体や環境にやさしい靴を作りたいと思っています。 ▼だから靴に使われる素材にもこだわります。靴のアッパー(表革)やライニング(裏革)にはベジタブルタンニンレザーを多く使っています。 クロムレザーという金属溶液で作る革も多少は使いますが、 植物からの抽出液で鞣されるタンニンレザーは製造工程において環境に与える負荷がクロムレザーよりも少なく、 出来上がった革自体も人体へのアレルギーなどの悪い影響が少ないものです。 ▼そして何より、現在の革製品(靴や鞄)の主流であるクロムレザーが持つその生産性や低コストという価値の選択によって犠牲にしてきた、 革が本来持っている「革らしい質感」や「動植物由来の自然素材」という魅力をタンニンレザーは持っているのです。 ▼また、靴を作る行程で欠かせないものに接着剤があります。 靴や鞄をつくる個人の工房や規模の小さい工場の殆どは、トルエン(シンナーの主成分)を溶剤とする一般的にボンドと言われるような接着剤を使っています。 しかしトルエンには毒性があり、継続して一定量を吸い続けると将来的に脳神経系に悪影響が出るという研究結果が発表されているのです。 ▼工房では、履き手の足や環境にやさしい靴を健康的に楽しく作って頂きたいという思いで、 トルエンや他の有機溶剤を使っていない「水性接着剤」を工房を始めたときからずっと使用しています。 溶剤系と比べると多少接着力が弱かったりコストがかかったりしますが、履く人の身体や周辺環境に少しでもやさしい方を選ぶことのほうがよいと考えています。